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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

その隠し場所の秘密については、父の老博士すらも全く与り知らなかった。必要な際に新一がそれをどこからか持ち出して来るのを見るばかりであった。一行のうち憲兵を除いて、間諜防禦戦に最も深い関心を持っていたのは、新一青年と南博士であった。随って二人はこの問題について意見を戦わす機会が多かった。

「不思議だ。憲兵隊と警察とがこれ程警戒し、捜査しているのに犯人は出て来ない。イヤ、確かに出ては来るのだが、これを捉えることも、目に見ることさえ出来ない。君はこれをどう思いますか。全く馬鹿馬鹿しくなりますね」

南博士が腹立たしげにいう。博士は妹の京子に似て目鼻立の整った好紳士である。航空機製作技術界の一権威であるが、年はまだ三十七歳、少壮気鋭の科学者だ。

「馬鹿馬鹿しいのではなくて、恐ろしいのです。何だか途方もないカラクリがあるのじゃないかと思うと、僕は時々ゾッとすることがあります。南さん、あなたはこの別荘の中に当の敵がいるのじゃないかと、疑って見られたことはありませんか」新一が声を低くしていう。

「別荘の中に秘密の隠れ場所でもあるというのですか」

「イヤ、そうじゃありません。