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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

家中の電燈をつけて下さい。そして家探しをして下さい。犯人はどこかにまだいるはずです。皆さんお願いです」

新一が上ずった声で叫んだ。五十嵐老博士はその時全く絶命していたのではないことが後になって分ったけれど、夥しい血を流し、意識を失って倒れている老人の姿を見ては、新一をはじめその場に居合せた人々が、絶命と思い込んだのは無理もないことであった。

誰かが先ずその部屋の電燈の釦を押した。老博士の寝室がパッと明るくなった。電燈の光によって被害者を見た人々は、「殺人」という恐るべき事実を、一層明確に意識した。

人々はうろたえていた。新一の叫び声に応じて、部屋を飛び出し、廊下や階段を意味もなく駈け廻った。その頃はもう別荘中の人が起き出して来ていたが、人数が増すにつれて右往左往の混乱は甚だしくなるばかりであった。

だが、七人の憲兵はさすがに少しも取乱さなかった。交替で眠っていた憲兵も素早く昼間の服装をつけて要所要所に駈けつけていた。建物の周囲には寝ずの番が見張っていた上、新手の人々も加わって、たちまち蟻の這い出る隙間もない警戒網が張られた。

部屋という部屋の電燈をつけて廻り、窓の幕を開いて、庭までも明るくし、犯人の逃亡に備えたのも憲兵の機転であった。