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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
しかし私は魔術師ではありません。科学者です。ただ普通の科学者などは想像もしない大きな目的を持っているという点で、大学の先生などと違っているだけなのです」
韮崎はそこにころがっていた木箱の上に腰をおろして、落ちつきはらって長話をはじめた。証拠の品とやらは、この前説明が終ったあとで見せる積りなのであろう。三好曹長は相手のなすがままに任せ、自分も一つの木箱に腰かけて、この奇妙な演説者の顔を見守るのであった。韮崎の饒舌はつづく。
「科学が空想のあとを追って進歩して来たことは、誰でも知っている通りです。鳥のように飛びたいなあという空想が、現代の航空機を造り出す基となったのですね。魚のように水中を泳ぎ廻りたいという空想が、潜航艇を造り出したのです。古代人は一瞬にして千里を走る魔法の靴を空想しました。ギリシャ神話に翅の生えた靴を穿いている神様があります。西遊記の孫悟空は斗雲に乗って一瞬に千里を走るのです。速度の夢ですね。現代の航空機、ロケットなどがこの夢に近づこうとしています。千里眼はどこの国の古代人も空想しました。千里先の蟻の数をかぞえ得る目、千里先の蚊の鳴く声を聞く耳は、誰もが夢見たところです。