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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
平和の宗教を説く学園の礼拝にも、
「神さまよ、国家の為めに戦う軍人等の上に豊かなる御恵みを下し給え」
というお祈りが捧げられた。それはジョンソン博士だった。先生の考えに従うと、戦争をする国は何方もいけない。罪のない軍人丈けが可哀そうだという意味らしかった。
「この戦争、それは最悪に達するまでやみません。日本の為め、露西亜の為め、又世界の平和の為め、真に困ったことであります」
と極めて当り前のことを言っていた。しかし猪股先生初め日本人の教師は大に愛国心を発揚した。
「神さまよ、我軍が一日も早く露西亜軍を満州の野から撃退するよう、この上の御導きを与え給え。過日来、敵軍はその勢力を奉天に集注していました。今や我軍はこれに対して総攻撃を試み、未曾有の大勝利であります」
と猪股先生はやる。次いで、生徒に向って、
「唯今のお祈りによってお分りの通り、我軍は奉天を占領しました。もう大丈夫です。敵国降伏は目に見えています。諸君は安心して勉強するが宜しい」
と言うところを見ると、お祈りよりも報告だった。
学窓がこの通りだったから、世上は無論湧き立っていた。毎日のように号外が出る。