轻松读懂日语经典作品
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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
「僕はこの春明治学園の側を通った。余っ程寄って見ようかと思ったけれど」
「寄ってくれゝば宜かったです」
「この服装だからね」
「構いませんよ」
「連中から便りがあるかい?」
「小松さんから時々手紙が来ます。北村さんは早稲田にいます」
「北村君には会ったよ」
「いつ?」
「ついこの間。矢っ張り号外を売りに出た時」
「僕はこの正月郷里で会ったきりです。あなたの住所を知らなかったですよ」
「誰にも教えない」
「何故ですか?」
「然ういう約束だもの。君も訊かないでくれ給え」
「仕方ないです。しかし今何をしているか、それぐらい話しても宜いでしょう」
「この通りさ。新聞配達をやっている」
「学校へは行かないんですか?」
「夜学へ通っている」
「何の?」
「法律学校さ」
「何処の?」
「それを言えば分ってしまうよ」
「分っても宜いじゃないですか?」
「いけない」
「相変らず頑固だな」
と私は諦めた。
「しかし河原君、僕はこれでも安心立命を得ているよ。この点、君にお礼を言わなければならない」
「何ですか?」
「君の蒔いた種が生えた」
「はゝあ」
「僕は神さまが見えかけて来た」
「教会へ出るんですか?」
「うむ。聖書も読んでいる」