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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
これは唯今から念の為めに申上げて置きます。宜いですか? 諸君。その期に及んで後悔しても先に立ちませんぞ」
と警告した。
「あれは脅しだよ」
と高木君が善意に解釈した。
「無論さ。高等学部は開闢以来落第がない」
と立花君も保証した。それを文字通りに信じたのでもなかったが、私達は当局を甘く見過ぎた。猪股先生が再三注意してくれたにも拘わらず、
「大丈夫だよ。試験の時に本気になれば大丈夫だ」
と相変らず高を括っている中に、その試験が来て、吉田君と赤羽君が落第した。前者は病弱で力が及ばなかった。後者はズボラで少しも勉強しなかった。
私達は早速相談会を開いた。
「運動して二人を救おう」
と高木君が発起した。
「しかし成功するか知ら?」
と立花君が危んだ。
「君がそんなことじゃ困る。級長のくせに」
と野崎君は一生懸命だ。
「無論やるにはやる」
「君、皆を代表して、猪股先生のところへ行ってくれ給え」
「行く。行くには行くよ。しかし……」
「しかしなんて言う奴に頼むな。僕が行く」
と私は憤慨した。
「僕も行く」
と安部君も蹶起した。
「皆で行こう」
ということになった。
その夕刻、猪股先生は私達がゾロ/\門を潜るところを二階の書斎から見ていた。