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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

直ぐに下りて来たが、

「君達は吉田君と赤羽君の成績のことで来たのでしょう?」

と機先を制して、玄関払いの意思を示した。

「然うです」

と立花君が一同を代表した。

「もう発表したから仕方ありません。再三注意したのに勉強しないから、本人達が悪いんです」

「御道理ですけれど、仮及第ぐらいになりませんでしょうか?」

「卒業に仮及第ってことはありません」

「他に何か方法はありませんでしょうか?」

「さあ」

と先生は首を傾げた。

「先生、何うかしてやって下さい」

と皆異口同音だった。

「実は本人を呼んで篤と話すことになっていますから、まあ/\、君達は差控えて下さい」

「先生」

「教員会議で定ったことを私一人で動かす次第に行きません。この問題丈けなら、もうこれで失敬します」

と言って、先生は玄関の障子を締めてしまった。

私達は生垣の蔭に匿れていた本人の赤羽君と吉田君を呼んだ。

「聞いたか?」

「うむ」

と二人とも頷いた。

「未だ脈があるようだから、直ぐ行って見給え。感情を害しちゃ駄目だぞ」

と私が言い聞かせた。

「御免」

と赤羽君が改めて案内を求める。私達は運動場へ退却して待っていた。二人は三十分ばかりたって帰って来た。