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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
人格貧乏、それ、一番いけない。野崎さん、何うですか?」
「はあ」
「基督は金貧乏でありました。大変に金貧乏でありました。『狐は穴あり。空の鳥は巣あり。されど人の子は枕するところなし』しかし人格貧乏でありません。私達、皆小きの基督。金貧乏、それ、恥でない。人格貧乏、それ一番いけない。河原さん、分りましたか?」
「はあ。分りました。それではこれで失礼致します」
と私も最早諦めた。
辞し去って校庭へ出た時、
「迚も駄目だ。話にならない」
と野崎君は落胆していた。
私達は次に猪股さんを訪れた。先生は先頃の運動の時と違って、快く迎えてくれたが、私達の用件については、
「心配しているんだけれど、不景気の所為か、此年は一向申込がない。困る」
と首を傾げるばかりだった。
「先生、横浜あたりの外国商館に御懇意の方はございませんか?」
と野崎君が訊いた。
「さあ。古い卒業生の勤めているところがないこともないけれど」
「然ういう手蔓を辿って、此方から探しに出掛けます。何うせ遊んでいるんですから」
「それも一つの方法だね。紹介状を書いてやろうか? 何とかいう男が何とかいう商館に入っていたよ。