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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「僕のところの奴は怠けて仕方がない。それに皆雁首が悪い」

「そんなこともなかろう」

「いや、妻に似ると好かったんだが、皆僕に似たんだ。迚も好い筈がないよ」

と赤羽君は大いに主張した。この辺は昔と変らない。

「君は学園へ講堂を寄附したってね?」

「うん」

「心掛が好いや」

「何あに、あれは、ハッハヽヽ」

「何うしたんだい?」

「妻の面当てだよ。僕が三万円で芸者を引かせたって噂が立ったのさ。噂だよ、君」

「うむ」

「事実無根だ」

「大いに弁解するね」

と私は皮肉ってやった。

「君は教育家だからさ」

「それからどうしたんだい?」

「妻の奴、大に憤慨してね、間もなく学園から何とかって先生が勧誘に来た時、家には要らない金がありますからって、独断でやってしまったんだ」

「成程」

「今更後へも引けなかったのさ」

「すると寄附金も有難味がなくなるね」

「当り前さ。卒業の時に因縁をつけた上、世話もしないでおっ投り出すんだもの。君は僕が学園に好意を持っていると思うのかい?」

と赤羽君は腕捲りをした。恨骨髄に徹している。

「しかし君は評議員じゃないか?」

「あれは彼方で勝手にしたんだ。又引き出す料簡だろう」