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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
「友一や」
「何ですか?」
「能く今まで辛抱したな。お父さんが悪かった」
と父親はシミ/″\言った。
忘れもしない。その日のことだった。町の牧師さんが訪ねて来た。この人は父親を教会へ引き入れようと思って努力していた。
「坊ちゃん、日曜学校へお出になりませんか?」
と私にも勧めて、来る度に綺麗なカードをくれた。しかし母親が、
「耶蘇は磔刑だから怖いよ」
と言うものだから、行ったことは一遍もない。
「占部さん、私の煩悶よりも忰の煩悶を救済する法はないでしょうか?」
と父親がその日の話の中に私の問題を持ち出した。
「何ういう事件ですか? お宅の坊ちゃんは模範生じゃありませんか?」
と牧師さんまで私の成績を知っていた。
「実はその模範生で私も今朝から後悔しているんです」
「結構です。悔い改めて神さまをお信じなさい」
「然う早合点をなすっちゃ困ります」
「ハッハヽヽヽヽ」
「始終一緒にいて、忰の苦しみを六年間も知らなかったのです。いやはや、迂濶な話ですよ」
と父親は私の立場を説明した。序に、
「こんな次第でもう親の学校にいたくないから、早く中学校へ行きたいと言い出しました。実は高等を卒業させて師範へやりたいんですが、親の考えばかり通すのは今の模範生でも分っている通り、本人を殺すことになります。