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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
気にするには及ばない」
「僕は口惜しいです。種々のことをして僕を困らせるんです。尋常一年の時から先生が僕をお手本にして皆を叱ったものですから、恨みが山ほど積っているんです」
「ふうむ」
「去年の今頃……」
と私は思い出したら、涙がホロ/\零れた。
「何うした?」
「…………」
「言って御覧」
「僕は撲られたんです」
「誰に? 何処で?」
「遠足に行って静岡へ泊った時です」
「誰が撲った? 話して御覧」
と父親は真剣になった。職掌上も捨てゝ置けない。私は一部始終を物語って、
「僕は何うしても豪い人になって、皆を縛ってやります。中学校へやって下さい」
と又泣き出した。
「能く分った」
「やって下さいますか?」
「考えて見よう。お前がそれほど行きたがるものなら、何うにかして出来ないこともあるまい」
「僕は屹度豪くなって皆を縛ってやります」
「縛らなくても宜いさ。豪くさえなれば縛ったのも同じことだ」
「それから僕はもう模範生は厭です」
「それはもう少時辛抱しておくれ」
「友達が一人もないから面白くありません」
「暴れゝば友達が出来る」
「暴れても宜いですか?」
「宜いとも。喧嘩でも何でもしろ」
「一人と一人なら国分にだって誰にだって負けません」