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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
「それは小学校と違う。第一校舎が新しい」
「僕は実に愉快だ」
「僕もさ」
「君よりも僕の方が愉快だ。その理があるんだ」
「何んな?」
「僕はもう模範生にならなくても宜いんだからね」
「それで今八幡様の前でお辞儀をしなかったのかい?」
「これは参った」
「ハッハヽヽヽヽ」
「中学生になってそんなことをすると笑われる」
「僕は耶蘇になったと思っていた」
「耶蘇なんかになるものか」
「あんなものにはならない方が宜い」
「僕が君よりも愉快だってのは、もう一番にならなくても宜いからさ」
「君は何うせ一番だよ」
と言った安井君は小学校で二番だった。
「何あに、もう駄目だよ」
「何故?」
「小学時代は親父に迷惑をかけるといけないと思って無理に勉強したんだ。しかし苦しかったぜ」
「それは察していたよ」
「もう一つ先生の手加減があったんだ。僕は校長の子だからね。実力は君の方が上だよ」
「そんなことがあるものか」
「兎に角、今度はもう宜いんだ。一番にならなくても、校長は迷惑しない」
「するよ」
「何うして?」
「校長先生はこの間入学式の時に、皆一番になる積りで勉強するようにと言ったろう?」
「あれは矛盾している。一番は級に一人しかない」