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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「高商を受けてしくじりました」

と青年は頭を掻いた。私は好い気味だと思った。

「何ういう理由で今回学園の高等学部を志望しますか?」

「矢張り、その、何です、将来実業界に雄飛したいと思いまして」

「成程」

「大変好い学校で、語学をやるにはこゝに限ると丸尾先生が仰有いました」

「中学校の成績は何んな具合でしたか?」

「可もなく不可もないところでした」

「何番で卒業しましたか?」

「中どころです。二十九番でしたから」

「何人中の?」

「さあ。三十四五人いました」

「はゝあ」

と猪股先生は感心したようだった。私も変な中どころがあればあるものだと思った。見す/\矛盾したことを平気で言っている。

「五年の時に三週間ばかり休んだのが利いているんです」

「こゝの高等学部は主として西洋人が教えますから、英語の力が足りないと、苦しいですよ」

「はあ。それは丸尾先生からも、承わりました」

「英語の成績は何んな具合でしたか?」

「中どころでした」

「この履歴書の賞罰のところに停学三週間とあるのは一体何をしたんですか?」

「さあ」

と青年は行き詰まって、又頭を掻いた。

「匿さずに言って見給え」

「ストライキを起そうとした形跡があったんです」