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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
威張っていやがる。あのまゝよせば宜かったのに、兎に角と思って行って見たら、唯今大切な御客来中だって、又やられたよ」
「それじゃもう永く会わないんだね?」
「この間校友会の相談会で会ったよ。奴も僕も評議員だ」
「何とか言っていたかい?」
「僕は癪に障っていたから、顔を合せると直ぐに、コツンと一つやってやった」
「乱暴だね」
「相変らず愚なるが如き容貌をして、『何だ?』と言ったぜ」
「吃驚したんだろう」
「此方も『何だ?』って言い返してやった。あれで充分意味が通じたろうと思う」
「それから何うしたい?」
「それっきりさ。実に失敬な奴だ」
と野崎君は憤っていた。尤もこの男は学生時代から荒かった。性急で吃る癖があって、詰まると手の方が先に出る。
さて、二十何年か前の同級生四名をこゝに引き出して、その現況を紹介したのは真の前置に過ぎない。私はこれから柄にない小説を書く。これには深い動機がある。元来私は英語の教師だ。筆を取っては「英文和訳の秘伝」や「和文英訳の秘伝」の外に能がない。しかし輓近大に感ずるところがあった。目下又々「新英文和訳」というのを編纂中、集めて置いた材料の中から次の一節が現れたのである。