轻松读懂日语经典作品
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
ひどく足が悪いらしく廊下の上でも、ステッキを離さない。
びっこで、鼻くたの、薄気味悪いお客さまだ。しかし、仕立卸しの合トンビを初め、服装が仲々立派なので、少々片輪者でも、宿の者は鄭重に取扱った。
階下の一室へ通されると、彼は何よりも先に、何度も聞き返さなければならない、不明瞭な言葉で、こんなことをたずねた。
「姉さん、ここに柳倭文子という美しい女が泊っているかね」
お泊りですと、正直に答えると、その部屋はどこだとか、男友達の三谷青年とは、どんな風にしているかとか、フガフガと根掘り葉掘りたずねた上、倭文子達に、わしがこんなことをたずねたといってはいけない。口止料だ、と十円紙幣を抛り出した。
「あれ何でしょう。気味が悪いわ」
老人の食事が済んで、お膳をさげて来た女中が、廊下の隅で、別の女中を捕えて、ヒソヒソ囁いた。
「あの人、幾つ位だと思って!」
「そうね、勿論六十上だわ」
「イイエ、それが本当は、ずっと若いらしいのよ」
「だって、あんな真白な頭をしているじゃないの?」
「エエ、だから、猶更おかしいのよ。あの白髪だって、本当に自分の髪だかどうだか。それから色眼鏡で目を隠しているでしょう。