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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「別にです。小川の事件と、斎藤の事件の間に、誰も知らないもう一つの殺人罪が、しかもこの部屋で行われたのです」
この前口上は、確に大成功であった。見物達は、少からず興奮して、第二幕目の開演を、今やおそしと待受けた。
「では、またしばらくの間、電燈を消します。その前に、お断りしておきますが、今この部屋で、まことに異様な殺人罪が、如実に演じられますが、それは勿論お芝居に過ぎません。どんな恐ろしいことが起っても、決して口出しや手出しをなさらぬようにお願いします。では、……」
前口上が終ると、パチンと電燈が消えて真っ暗になった。窓の外には、もう暮れ切って、美しい星がまたたいている。
こんなに暗くっては、お芝居が見えやしないと、いぶかる内に、ポッカリと向うの壁に、大きな円光が現われて、不気味な仏像達が、幻燈の絵の様に浮き上った。
明智が、いつの間にか、懐中電燈を用意していて、その丸い光を、正面の壁に投げていたのだ。
円光は、徐々に、仏像群を通り過ぎて、壁のはずれ、入口のドアの前にとまった。
見ると、その光の中で、ドアの引手がソロリソロリと廻っている。何者かが、外からドアを開こうとしているのだ。