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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

恒川警部も、明智小五郎さえも、この、地獄の底からひびいて来る様な、のろいの言葉に、異様な悪寒を感じないではいられなかった。

谷山は止めどもなく叫び続ける。

「おれは、棺の中の倭文子に、思う存分の苦しみをなめさせた上、焼死の一歩手前で、あの女を救い出してやった。親切からだと思ってはいけない。ただ焼き殺したのでは、あんまりもったいないからだ。……

救い出された倭文子は、おれの顔を見るとさもうれしそうにしがみついて来た。おれはあの人の恋人である上に、命の恩人となった。ハハハハハハ、このおれがだぜ。それから、二人をこの工場へ連れて来たのだ。倭文子も茂も、何も知らず、いそいそとおれのあとからついて来た。……

おれは二人をこの部屋へ連れ込み、そこで、四五日もかかって、一寸だめし五分だめしに、おれの本当の心をジワジワと告げ知らせてやった。その時の、あいつらの驚き、恐怖。おれは初めて敵を討った様な気持がした。それから、泣き叫ぶ二人を、あの亜鉛箱の中へとじこめ、水をつぎ込んだ。倭文子は、せめて茂の命だけ助けてくれと、手を合わせて頼んだが、おれは聞えぬふりをしていた。