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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
つまり、それから暫くの間、小川の死体は、その書斎の中に、完全に密閉されていた訳である。
三十分程して、麹町警察と警視庁とから係官が出張して来た。
その人数の中に、名探偵と聞えた捜査課の恒川警部が混っているのを見ると、当局が、引続いて起った、畑柳家の怪事を、可成重大に考えていることが分った。
警官達は、斎藤老人から、大体の事情を聞取ると、兎も角現場を検分することにして、老人の案内で、二階の書斎へと上って行った。
「部屋の中は、少しも乱さぬよう、十分注意を致しました。死骸は勿論、何一品動かしたものはござりません。私共は、むごたらしい死骸を一目見たばかりで、逃げ出してしまった様な訳で」
老人はそんなことをいいながら、鍵を廻してドアを開いた。
人々は血腥い光景を想像して、ややためらいながら、部屋の中を覗いた。電燈はつけたままになっていたので、一目で隅々まで眺めることが出来た。
「オヤ、部屋が違うのじゃないかね」
最初に踏込んだ、麹町署の司法主任が、けげんらしく呟いて、老人を振返った。
何だか、変てこな質問である。
一同妙に思って、続いて部屋の中へはいって行った。