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だらくろん(ぞくだらくろん)

堕落論・日本文化私観 他二十二篇

坂口 安吾

坂口安吾『堕落論・日本文化私観 他二十二篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:堕落論〔続堕落論〕、悪妻論、意慾的創作文章の形式と方法、インチキ文学ボクメツ雑談、咢堂小論、教祖の文学、戯作者文学論、デカダン文学論、文章の一形式、武者ぶるい論、文字と速力と文学、余はベンメイす。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,198 字 · 171 页

青空文庫

教祖の文学

去年、小林秀雄が水道橋のプラットホームから墜落して不思議な命を助かったという話をきいた。泥酔して一升ビンをぶらさげて酒ビンと一緒に墜落した由で、この話をきいた時は私の方が心細くなったものだ。それは私が小林という人物を煮ても焼いても食えないような骨っぽい、そしてチミツな人物と心得、あの男だけは自動車にハネ飛ばされたり川へ落っこったりするようなことがないだろうと思いこんでいたからで、それは又、私という人間が自動車にハネ飛ばされたり川へ落っこったりしすぎるからのアコガレ的な盲信でもあった。思えば然しこう盲信したのは私の甚しい軽率で、私自身の過去の事実に於いて、最もかく信ずべからざる根拠が与えられていたのである。

十六、七年前のこと、越後の親戚に仏事があり、私はモーニングを着て東京の家をでた。上野駅で偶然小林秀雄と一緒になったが、彼は新潟高校へ講演に行くところで、二人は上越線の食堂車にのりこみ、私の下車する越後川口という小駅まで酒をのみつづけた。私のように胃の弱い者には食堂車ぐらい快適な酒はないので、常に身体がゆれているから消化して胃にもたれることがなく、気持よく酔うことができる。