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だらくろん(ぞくだらくろん)
堕落論・日本文化私観 他二十二篇
坂口安吾『堕落論・日本文化私観 他二十二篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:堕落論〔続堕落論〕、悪妻論、意慾的創作文章の形式と方法、インチキ文学ボクメツ雑談、咢堂小論、教祖の文学、戯作者文学論、デカダン文学論、文章の一形式、武者ぶるい論、文字と速力と文学、余はベンメイす。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,198 字 · 171 页
デカダン文学論
極意だの免許皆伝などというのは茶とか活花とか忍術とか剣術の話かと思っていたら、関孝和の算術などでも斎戒沐浴して血判を捺し自分の子供と二人の弟子以外には伝えないなどとやっている。尤も西洋でも昔は最高の数理を秘伝視して門外不出の例はあるそうだが、日本は特別で、なんでも極意書ときて次に斎戒沐浴、曰く言い難しとくる。私はタバコが配給になって生れて始めてキザミを吸ったが、昔の人間だって三服四服はつづけさまに吸った筈で、さすればガン首の大きいパイプを発明するのが当然の筈であるのに、そういう便利な実質的な進歩発明という算段は浮かばずに、タバコは一服吸ってポンと叩くところがよいなどというフザけた通が生れ育ち、現実に停止して進化が失われ、その停止を弄んでフザけた通や極意や奥義書が生れて、実質的な進歩、ガン首を大きくしろというような当然な欲求は下品なもの、通ならざる俗なものと考えられてしまうのである。キセルの羅宇は仏印ラオス産の竹、羅宇竹から来た名であるが、キセルは羅宇竹に限るなどと称して通は益々実質を離れて枝葉に走る。フォークをひっくりかえして無理にむつかしく御飯をのせて変てこな手つきで口へ運んで、それが礼儀上品なるものと考えられて疑られもしない奇妙奇天烈な日本であった。