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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
あれ以上立入る必要もなかったのだ。心理的にも生理的にも……。しかし、みんなそうするのだ。人間って奴はそうなんだ。そして、結婚したい奴は、それを動機に結婚する。結婚したくない奴も、しでかしてしまった以上、結婚する。そして、結婚してしまえば、もう罪を感じないし、後悔もしない。結婚という形式は便利に出来てやがる。結婚は女をひどい目に会わせたことのつぐないになるし、また、今後ひどい目に会わせるための正当な手段に、結婚という形式が利用されるのだ。一体、結婚って何だろう……? 男女の行為は結婚生活の下では、誰も非難しない。結婚は偽善の形式だろうか」
喫茶室からは、相変らず蓄音機の軍歌が聴えていた。
「――殺人は人間の行為の中で、最も悪徳の行為だ。が、軍部の奴らは、戦争の名に於て殺人を奨励している。男女の行為と結婚の関係も、殺人と戦争の関係みたいなものだ」
丁度そこへ、蜂谷重吉が例によってモーニングを着用して、ふわりとやって来た。
「やア、今日の新聞見ましたか」
「いいえ、見ません!」
信吉はきっぱりと言った。
「どうして……?」
「僕の劇の悪口をいっている劇評がのってるらしいんです。