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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
新聞なんか見たくない」
「なるほど。しかし、暗号はべつでしょう」
「いいえ、見たくありませんねえ」
「なるほど……。見たくない。あなたは実に賢明だ」
「……? ……」
「だいいち、見たいと思っても、もう暗号は見つからない」
「出ていないんですか。よしたんですか」
「やむを得ざる事情があってね。実は女が逃げたんですよ。恋人をこしらえてね」
「ほう……? 相手は……?」
「気になるんですか」
「まさか。儀礼的にきいてみただけです。相手が東条であっても、僕は驚かない。東条だって、女には手を出すでしょう」
「ところが、残念ながら、総理大臣じゃない。学生ですよ。あの女の従弟でね。若い男なんてやつは、すぐ女に同情したがるんでね。置手紙によれば、プラトニックラヴを双方しているそうですよ。信じられますか」
「あなたはどう思うんです」
「わざわざプラトニックだと断ってますからね」
「かえって、怪しい……?」
「しかし、まア、女というものや学生というものは、理想家ですね。九分九厘まで行って、ギリギリの一点を残して、あとは大いに享楽して、それでプラトニックだと称している手合いが多いんだ。一種の性的錯倒ですな。