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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页

青空文庫

「さっき、一寸来てみたの。閉ってましたわ」

伊都子は恥しそうだった。大胆にふるまっていても、やはり娘であった。

「済まなかった。稽古が遅くなってね、今帰って、あなたの部屋へ電話を掛けようとしていたところだったんだ」

信吉がそう言うと、伊都子は顔色を変えた。

「電話掛りまして?」

「いや、すぐ取り消したから……」

伊都子はほっとして、

「ああ、よかった。電話通じたら、伯父さん眼を覚しますわ」

伯父と二人で上京して、同じ部屋に泊っているらしかった。

「――でも、酔っぱらって寝ちゃっているから、ベルぐらいで起きないかも知れないわ」

伯父が寝ている隙をねらって出て来たと伊都子は言った。

「――伯父さん、とっても品行わるいのよ。タイピストの学校の校長さんだけど、生徒とスキャンダルを起したりしてるのよ。このホテルの受付の女とも、何かあるらしいの。いやね。伯父さんだって悪いことをするんだもの……」

自分もするわと言わんばかしに、伊都子はいきなり唇を寄せて来た。そして、信吉の手を取って、自分の胸に当てた。バンドをしていないので、胸のふくらみはたるんだ柔さだった。

火のような息を吐きながら、二人は絡み合ったまま倒れた。