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おんなきしゃのやくわり
女記者の役割
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1930(昭和5)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,039 字 · 32 页
「曲者の仕事は、これから始まるのです」
花房一郎の声も、それに劣らず凜々と響きます。これでは、秘密の相談などが出来そうでありません。ノックして入って行くと、
「あ、千種君、丁度良いところでした」
園田氏は如才なく立って迎えてくれます。
「書類が返ったそうで、先ず御安心で御座いました」
「ところが千種さん、それが一向安心でないと花房君は言うのですよ」
「そして、曲者の業は、これから本筋に入るのだと私は申しました」
花房一郎は眉も動かさずに、事務的な調子で斯う申します。
「本筋? それはどんな事です」
「曲者は、機密書類の真物に必要が無かったのです。言い換えれば、あの謄本が欲しかったのです」
「エッ」
「私が本筋と申すのはこれです。恐らく、誰かに売る積りは無いでしょうが、政府の反対党か、新聞があの書類の謄本を必要だったのでしょう」
「そんな事があるでしょうか」
「外に考えられません。それに私は、曲者の写真を手に入れて益々その考えを強めました」
「曲者の写真?」
園田氏も千種も、花房一郎の言葉に、思わず驚きの眼を見張りました。
「これです。御覧下さい」
花房一郎は騒ぐ風もなく、かくしの中から、手札形の写真を取出して、二人の前へ押しやりました。