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おそろしきつや
恐しき通夜
海野 十三
「新青年」1931(昭和6)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,092 字 · 30 页
でも母親の胎内を無理に引離され、こうしているその胎児には、もうすでに生命が通っていないのだった。闇から闇へ流れさった、その不幸な胎児の、今日は命日なのだ。その胎児にとって、今夜のこの話は、本当の意味の通夜物語なのだ。
これだけ云えば、星宮君、君にはなにもかも判ったろう。あの胎児の父は、君なのだ。あの胎児の母は、ちどり子と呼ぶ。さて此処で、君から訊かして貰いたいことがある。君に返事ができるかね。
先刻、君は私の手料理になる栄螺を、鱈腹喰べてくれたね。ことに君は、×××××、箸の尖端に摘みあげて、こいつは甘味といって、嬉しそうに食べたことを覚えているだろうね。
それで若し、私が、あのちどり子の次兄であったとして、いやそう驚かなくてもいいよ、先刻、君が口中で味い、胃袋へおとし、唯今は胃壁から吸収してしまったであろうと思われる、アノ××××が、栄螺の内臓でなくして、実は、君の血肉を別けた、あの胎児だったとしたら、ハテ君は矢張り、
『×××××を、ムシャムシャ喰べてみたが、たいへんに美味かった』
と嬉しがって呉れるだろうか、ねえ星宮君――」
「ウーム。知らなかったッ」