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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
七人の追手は忽ちドアの前に殺到したが、そこで又立ちすくんでしまった。ドアが細目に開いて、怪物の白い目がじっとこちらを睨みつけていたからだ。イヤ、目だけではない。ピストルの筒口が、今にも火を吐くぞとばかり、不気味に覗いていたからだ。
「向うの出口から廻って、はさみ撃ちにしたらどうでしょう」
一人の若者が囁き声で、妙案を持出した。
「よし、それじゃ、君は向うへ廻って、あちらにいる警官に、この事を伝えてくれ。出口の方を固めてくれるようにね」
これも惶しい囁き声の指図だ。若者は通路の壁を押し破って、鏡の部屋のうしろ側へ飛び出して行った。
愈々怪物は袋の鼠となった。彼は今、何も知らないで、戸の隙間から警官達を威嚇しているけれど、やがて背後の入口から、別の警官隊が殺到するのだ。腹背に敵を受けては、いかな兇賊も運の尽きに違いない。若し万一、どうかしてこの鏡の部屋は逃げ出すことが出来たとしても、小屋の外には六人の警官が見張りをしているばかりか、事件を聞きつけて集った弥次馬の大群が、テントのまわりをグルッと遠巻きにして見物しているのだ。その中を、どう逃げ終せることが出来るものか。