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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
あとに残った六人の追手は、じっとピストルの筒口を睨みつけながら、息を殺して時の来るのを待ち構えていた。
「クックックッ……」怪物は又笑い出した。アア、何も知らないで、呑気らしく笑っている。
五秒、十秒、十五秒……追手達の腋の下から冷い汗がジリジリと流れた。突然、鏡の部屋の中に物音がした。何者かが歩き廻っているのだ。咳払いの音が聞える。
しかし、賊のピストルはこちらを狙ったまま、少しも動かない。どうしたのかしら。オオ、今にも格闘が始まるのではないか。敵も味方も鏡に映る千人の姿となって、何千人の大乱闘が演じられるのではないか。
手に汗を握って待ち構える人々の前に、鏡の部屋のドアが、静かに開き始めた。オヤッ、おかしいぞ。怪物はやっぱりピストルを構えたままだ。では、早くも計略を悟って、逆にあいつの方から打って出る積りかしら。
人々はギョッとして、思わずあとじさりを始めた。
ドアは段々大きく開いて行く。黒い怪物め、愈々飛び出して来るんだな。逃げ腰になって、じっと見つめている一同の前に、遂にドアはすっかり開け放された。
すると、オオ、これはどうした事だ。そこに立っていたのは、敵ではなくて味方であった。