轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
老人夫婦さえ知らぬ、こんな秘密の穴蔵へ、仮令いたいけな子供の願いとはいえ、無謀に入って行くようなことはしなかった筈である。
だが、その時の川手氏は、この出来事を現実界のものとは考えていなかった。明治時代の風俗をした幼児と、夢の中で遊んでいるような漠然とした非現実の感じ、恐怖も恐怖とは受取れぬ無警戒な心持、謂わば空を漂っているような一種異様の朦朧とした心理状態で、つい子供のせがむままに、その穴蔵の階段を底へ底へと降りて行った。
階段を降りて狭い廊下のようなところを少し行くと、八畳敷程もある地下室に出た。床はコンクリート、四方はグルッと板壁に囲まれている。湿っぽい土の匂、押しつめられたように動かぬ空気、ジーンと耳鳴りのする死のような静けさ。手燭の蝋燭の焔は、固体のように直立したまま、少しも揺れ動かぬ。
その手燭をかざして、あたりの様子を眺めると、何一つ道具とてもないガランとした部屋の片隅に、たった一つ妙な箱が置いてあるのが目を惹いた。
丁度寝棺ほどの大きさの、長方形の白木の箱だ。近づいて見ると、その蓋の表面に、墨黒々と何か書いてある。読むまいとしても読まぬ訳には行かなかった。