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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
イヤ、あったとしても、駅員には少しも気附かれなかったのです。
で僕は一先ず東京へ帰ることにしました。例の怪指紋の犯人の仕業とすれば、その本拠は東京にあるのですし、いずれは川手氏の死体を東京の真中で、衆人に見せびらかす計画に違いないと考えたからです。それと、この事をあなたにも報告して、今後の処置について、よくお打合せしたかったのです。その上、都合によってはまたNへ引返すつもりでした。
ところが、今朝夜明けに新宿に着いて、一応自宅に帰り、今し方事務所へ来て見ますと、ここにも亦、実に驚くべき事件が待ち構えていたのです」
「エッ、ここにもですって?」
中村警部は、川手氏の行方不明について、もっと詳しく聞き糺そうとしていたのだが、今はそれも忘れて、膝を乗り出さないではいられなかった。
「そうです。僕が来る少し前、この事務所へ妙な品物が届けられたのですが、それを見て、僕は川手氏の行方を急いで探す必要はないと思いました。あの人はもう生きてはいないのです。その品物が川手氏の死をはっきりと語っているのです」
「それは一体何です。どうして、そんな事がお分りになるのです」
「これですよ」