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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

被害者川手氏を除くと、そういう条件にあてはまる人物は、たった一人しかありません。……それは宗像隆一郎氏です」

明智は別に語調を強めるでもなく、ゆっくり云いながら、静かに宗像博士の顔を指さすのであった。

「ワハハハ……、これはおかしい。こいつは傑作だ。明智君、君は探偵小説を読み過ぎたんだよ。小説家の幻想に慣れすぎたんだよ。如何にも探偵小説にありそうな結論だね。ワハハハ……、実に傑作だ。こいつは愉快だ。ワハハハ……」

宗像博士は腹を抱えんばかりに笑いつづけたが、悲しいかな、その笑い声の終りは、泣いているのかと疑われる程、弱々しい音調に変って行った。

「宗像さん、明智君は冗談を云っているのではないようです。今までの明智君の推理を聞いていますと、我々としても、何となくあなたがその手品遣いの本人ではなかったかと考えないではいられません。あなたはこの際、是非弁明をなさる必要があります」

刑事部長が宗像博士をキッと見つめながら、厳然たる警察官の口調で云った。

「弁明せよとおっしゃるのですか。ハハハ……、夢物語を真面目に反駁せよとおっしゃるのですか。僕はそういう大人げない真似は不得手ですが、強いてとおっしゃるならば申しましょう。