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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
或時はまた、見物は闇の通路で、何かしらグニャグニャした大きなものを踏んづけるのである。ギョッとして目をこらすと、何とも形容の出来ない、鼠色のいやらしいものが地上に横わっているのだ。どうやら顔らしい部分や、手足らしい部分が見えるけれど、無論人間ではない。と云って動物でもない。何かしら、ゾーッとするような、えたいの知れぬ物体なのだ。
ある場所では、真に迫った首吊り女が、見物の頭の上から、スーッとその肩に負ぶさって、両手でしがみつき、いやな声で笑い出す仕掛けもあった。
だが、それらの人形が、どれほど巧みに、いやらしく出来ていたとしても、屈強の男を走らせる程の恐怖は感じられなかった。よく見ていると滑稽でこそあれ、心から怖いというようなものではなかった。
「先生、つまらないじゃありませんか。ちっとも怖くなんかありゃしない。どうしてこんなものを見て逃げ出すんでしょうね」
「マア、終りまで見なければ分らないよ。それに僕達はただ慰みに入って来たんじゃない。大事な探しものがあるんだ。人形一つでも見逃す訳には行かないよ」
二人はそんなことを低声に云い交しながら、お化けや幽霊に出くわすとは、立止り立止り、歩いている内に、やがて竹藪の迷路を抜けて、黒板塀のようなものに突き当った。