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せんそういがくのおじょくにふれて
戦争医学の汚辱にふれて
平光 吾一
――生体解剖事件始末記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,206 字 · 24 页
を食べたというのである。
当時、小森と偕行社病院食堂にいた鶴丸広長軍医大尉の口述書が検事から法廷に提出されたが、彼はこう語っている。
「……昭和二十年五月下旬、私が病院食堂に入ると小森たちがいた。私は彼らの前においてあった薄い肉片の盛ってある大小二つの皿から、箸で三片ほどつまみ口に入れると、小森は『小皿の方は人間のキモだ』というので、慌てゝ吐き出した。すると、小森は『アメさんの捕虜の肉を食う奴は一人もおらんのか、腰抜け共め!』といって小皿の一片を食べ、『うまいぞ』と周囲を見回した。だが居合せた一同は大皿の豚のキモだけを食べていた……」
もしこれが事実なら検事の論難する如く戦慄すべき『鬼畜の所業』というべきである。
しかし、これは、全く事実無根だった。
小森軍医が捕虜の屍体から肝臓をとり出し、容器に入れて持ち帰ったまでは事実であった。が、彼はそれを病院にではなく兵舎に運んだのである。前々から兵営内に南京虫が氾濫して兵隊たちが悲鳴をあげているという話を聞かされていた彼は、捕虜の肝臓をその対策に当てたのであった。小森は兵隊たちに手にした容器の中の肉塊を示し、これを切ってその肉片を水を盛った皿に浮かし、寝台の下においておくと、そこへ南京虫が集まるから諸君の悩みは、たちどころに解消すると説明している。