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せんそういがくのおじょくにふれて

戦争医学の汚辱にふれて

平光 吾一

――生体解剖事件始末記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,206 字 · 24 页

青空文庫

人間の肝臓が果して南京虫予防の妙薬かどうか、私には解らないが、とにかく人肉問題の真相はこうだったのである。

こゝで疑問に思うのは、鶴丸広長君をはじめ、その他起訴された四名の被告――真武七郎、伊藤明、岸達郎、小田耐の各西部軍軍医諸君が何故人肉を試食したなどというデタラメな口述をしたのであろうか、ということである。しかし、それは裏面にこの事件を担当した米軍検察官の悪質な策動があったからであった。

検察官は二十四、五才のマクナイトという青年であり、父親は仙台神学校の教授とかで日本生れのせいか、大変日本語が達者だった。彼は生体解剖された捕虜の肝臓を小森軍医がもち去ったという事実を握ると、ただそれだけの根拠から、解剖して人肉を食ったのだ、捕虜の肝臓を食わんがために面白半分に生体解剖を行ったのだ、と想像をたくましくし、自分の妄想を何とか立証づけようと狂奔したのである。

調査に乗り出した、マクナイト検事は、たまたま福岡の偕行社病院から、大分陸軍病院に転属された真武軍医が、福岡に出てきた際、偕行社病院で旧同僚が彼を囲んで会食を行い、その席上肝臓の料理が出たことを知って、ここに彼の妄想の突破口を見出した。