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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

「今日は用心しろよ」と彼は自分に云った、「怒らせたらおしまいだぞ」

朝倉邸へ着いて、案内されたのは摂津老の居間であり、河本宗兵衛もそこにいた。

「時刻がないからすぐ用談にする」と摂津は直衛の顔を見ずに云った、「矢堂玄蕃の件についてなにか意見があるそうだな」

「矢堂の件について、特に意見はございません」

宗兵衛は吃驚したように直衛を見た。摂津も初めて眼をあげた。老人の灰色になった眉の下で、その眼が怒りをあらわしていた。

「意見はない」と摂津は反問した、「では河本に話したのはなんだ」

「私は玄蕃の御処致について、或る噂を耳にいたしました」と直衛は答えた、「単なる噂とは存じましたが、いかにも姑息であり、後難を残すやりかたなので、河本をたずねて事実を慥かめたのです、役目の秘事ですから河本はなかなか語ろうとは致しません、私はやむなく中所が筋目の家柄であり、家中の大事は知る権利があると」

「わかったわかった」摂津は膝の上で扇を鳴らした、「いまさら河本を庇うことはない。いいから要点を申せ」

「玄蕃の裁きはお白洲でつけるべきだ、と私は申しました」と直衛は答えた、「――新しい御定法には、たとえ百姓町人なりとも、家中の侍に不正があれば訴え出ることができると明らかに記してございます、したがって玄蕃の件もお白洲で裁かぬ限り、藩の名分が立た