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せいじがくにゅうもん

政治学入門

矢部 貞治

「政治学入門」アテネ新書、弘文堂、1951(昭和26)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,607 字 · 96 页

青空文庫

すなわち政治学でいう国家とは、最高で一般的な統制組織を持つ人間の地域的団体のことである。国家の統制組織は主として法と権力で維持される。法は社会規範の体系として、多少とも固定性と劃一性を伴うが、権力は政治目的に従って弾力性と即応性を伴う。この両者があいまって国家の統制組織が成り立つのである。

法を維持し適用するのは主として司法であるが、権力を直接に行使するのは警察である。国家の一体的な秩序と治安を確保して、「法の支配」を維持するに足るだけの司法と警察は、いやしくも国家として不可欠の要素であるが、国家の独立と安全を対外的に防衛するための軍隊が、国家の不可欠の要素であるかどうかは多少の問題がある。前にも述べたように、国家の独立と安全を保持することは、国家の最小限の目的に含まれているから、外敵の侵略に対する自衛手段としての軍隊を全然持たない国家は、少なくとも在来の国家概念からいえば、不完全な国家だといわねばならぬ。しかしながら一方では戦争が原子戦争の姿をとり、他方では有効な世界的集団安全保障の機構が成立するというような時代になれば、軍隊の有無は国家としての不可欠の条件とみられないようになるかも知れぬ。