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せいじがくにゅうもん

政治学入門

矢部 貞治

「政治学入門」アテネ新書、弘文堂、1951(昭和26)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,607 字 · 96 页

青空文庫

5 国家の本質

国家や社会制度の改善を説くのは正しいけれども、人間の共同生活に国家そのものが不要となるとは、到底考えられない。

既に二千年の昔アリストテレスが論破しているように、人間は「政治的な生物」であり、「社会に住むことを得ないもの、または自己に満足する故に社会に住む必要のないものは、必ずや野獣かしからずんば神である。かかる者は国家の成員ではない」のである。まことに国家的な統制秩序なしに、自由平和社会を実現し、共産的な経済を営み得るような社会がもしあったら、そのような社会の構成員は、恐らくは血と肉のある人間ではあるまい。血肉を持つ地上の人間が存在する限り、共同生活を欠くことはできず、共同生活がある限り国家がなくなることはないであろう。個々の国家は、あるいは変化しあるいは消滅するであろうが、しかし国家そのものが人間に不要となることは考えられない。かりに将来世界が一つになるような場合を想像してみても、それは個々の国家が国家でなくなり、その代りに世界国家が成立するということにほかならない。

5 国家の本質

国家は上に説くように、人間の共同生活の統制組織として欠くことのできない存在であるが、国家にどれほどの価値を認めるかということは、時と所と人によって一様でない。