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せいじがくにゅうもん

政治学入門

矢部 貞治

「政治学入門」アテネ新書、弘文堂、1951(昭和26)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,607 字 · 96 页

青空文庫

国家という形態も明らかな姿では存在しなかったであろう。しかしながらそれにもかかわらず、いやしくも少しでも対立や分化や抗争があり、秩序をみだすものがあったかぎりでは、どんな素朴な萌芽であったにせよ、既に共同生活の統制組織があったであろうことは否定できない。とりわけ原始種族と種族とがいつでも闘争しなければならない状態では、かりに種族そのものの内部には対立や抗争は少なくても、外敵に対する闘争態勢を整える必要から、どうしても指揮命令と服従の組織が生れざるを得ぬ。

そこに既に国家の萌芽がある。それがだんだんに発展して明確な国家の形態をそなえるようになるまでには、定住とか、征服とか、階級の発生とか、財産や身分の世襲制とか、搾取関係の成立とか、法と権力と刑罰の確立とかの要因が、大きな役割を持ったであろう。しかし根本では既に国家の萌芽はあるのであって、その後の発展は一つの連続的発展にほかならず、征服とか、搾取関係とか、財産や身分の世襲制とか、階級の発生とかの、個々の要因や契機をとらえて、それが発生する以前には全然国家はなく、それ以後だけに国家があるというようにいうことはできない。