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せいじがくにゅうもん
政治学入門
矢部 貞治
「政治学入門」アテネ新書、弘文堂、1951(昭和26)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,607 字 · 96 页
に任せる者は必ず亡ぶというのである。
「運」を掴むのにはこのように「強さ」がたいせつだが、政治家が人民に見せる外見については、正に「狡さ」がたいせつである。マキアヴェリはこの点について実に詳細で慎重である。細かくそれを述べることはできないが、要するに彼は寛大、仁義、信義、柔和、謙譲、節制、敬神、真摯、親切、重厚などという美質は、それらを外見上持っているようにみられることは、それらの反対の性質を持っているとみられるよりは有利であるが、しかし事実においてそれらの美徳を持つことは必要でないのみならず、かえって有害だという。すなわち場合により必要があれば、これらの美徳と反対に行動し、悪徳をもなし得ることが、政治家にはたいせつだというのである。
彼によれば、人民から忌わしく思われ、軽侮され、不平不満を持たれることが、政治家として最も避けねばならぬことである。人民にきらわれないことが最良の城壁である。しかし人民から愛されるがよいか恐れられるがよいかというなら、一般には愛されるよりも恐れられる方が有利で安全である。しかしきらわれることだけは避けねばならぬ。きらわれないでしかも恐れられることが肝心なのである。