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せいじがくにゅうもん
政治学入門
矢部 貞治
「政治学入門」アテネ新書、弘文堂、1951(昭和26)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,607 字 · 96 页
でなければならないのである。
政治制度は、まさにこのように複雑で不完全で矛盾に充ちた人間の性情の表現なのである。初めはどんなに美しい理念から発したものでも、ひとたび現実の制度になると、雑多の非合理的な要素が結びつく。理想や理念がそのままに制度化されるなどということはないのである。だから現実の制度に完全無欠で万能というものはあり得ない。政治制度は、性急、独断、偏頗な態度で評価されてはならぬので、広い立場で比較的にみないと、小児病的な誤りを犯すことになる。
かつてアレキサンドリアのギリシア文献の図書館を焼いたモハメットは、「もしこの図書館の書物がコーランと同じことを書いたものなら無用だし、そうでないなら有害だ」といった。フランス革命のときアベ・シエスがこの論法をまねて、「もし上院が下院に同意するなら無用だし、反対するなら有害だ」といって、一院制を主張した。こういうのが正に小児病的な誤りを犯しているものである。モハメットの論理は、コーランが宇宙の真理を包括しつくして、絶対に誤るところがないという前提でのみ認められることだし、アベ・シエスの論法は、下院が絶対に過ちを犯すことなく、また下院以外に絶対に正しいものはないという前提が成り立たない限り、是認することはできない。