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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
04 第四分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页
と、答え、
「つぶさなことは、御陣のお暇をみて、徒然のおなぐさみにでも、いずれお話し申し上げましょう」
と、のみで、その折には、語らなかった。
徳川家康をはじめ、諸将老臣が居合わせていたし、それを語れば、自然、自分の手功ばなしとなるので、わざと、避けたものと見て、信長も深くは訊かなかった。
ただ彼の、これから先の大決戦に第一陣をという願いに対しては、
「すでに、その第一陣は、徳川殿に嘱してある。そちは、第四番につけ」
と、信長はいった。
藤吉郎は、家康の倖せを羨望したが、素直に退って、自分の人数を、総軍第四番手に備え立てた。
陣営の前を、きれいな河が流れていた。姉川の支流である。一夜、営内で快眠した藤吉郎は、まだ兵も眠っているうちに、一人そこの河べりへ来て、顔を洗っていた。
「殿。お早いことですな」
後ろで、誰かいう。
「お……。竹中半兵衛か。そちも早いなあ。寝たか、ゆうべは」
「よく寝ました」
「体は快いかな」
「ありがとうぞんじます。さてさて、戦は病人によく効く名薬と思いました」
「はて。異なことを」
「されば、平常は病を宥わられて、季節変り、朝夕の寒暑にも、立ちどころに咳声を増し、よく熱など出す弱体が、この炎暑に、粗食をつづけ、兵や軍馬と共に歩み、夜は露草の上に臥しながら……どうでしょう、かえって、この通りな健康