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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

「分っております」

「そちは、信長の命を、うくるかどうか。信長の命を非と思うか」

「思いませぬ。つつしんでおうけいたしまする。――いや、お待ちください。その御命令の本旨は、元々この藤吉郎が、書をもって、殿のお手許へ献策いたしたことで、殿の御決断は、それがしのおすすめに依るものでござりましょう」

「な、なにを。……いつそちが左様な献策を」

「いや、そうです。お忘れかも存じませぬが、すでにもうこの春頃でしたかな。――あいや明智殿、武井、佐久間の御両所にも、先ほどからの御忠諫、うるわしき臣道の真心、藤吉郎も蔭にあって、涙をもよおしましたが……しかし、各※(二の字点、1-2-22)の第一にお案じあるところも要するに、叡山を焼討ちになどいたしたら、世の人心が君公から離反するにちがいない、故に君公のおんためには、死をもっても、お諫めせねばならぬという御決心でござろうが」

「もとよりのこと。仰せのごとき暴をなせば、上下の怨嗟をうけ、諸方の敵方に乗ぜられ、末代、殿の悪名は拭うべくもおざるまい」

「いや、そこが、ちと違いましょう。……叡山へお手入れのうえは、断じて、徹するまでやるべしとは、この藤吉郎が献策で、実は殿の御発意ではござらぬ。