轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

……この母は、この母はただ……」

急に、ここでまた、よよと咽び伏したところを見ると、老婆が、家康に向って、何か云いたいとする真実もこのことばの先にあるらしく思われた。

で、家康がなお、ねんごろに質すと、老婆はこういった。

「あれも、さむらいの子。わしじゃとて、さむらいの子の母でござりまする。討死を、なんでめめしゅう嘆きましょう。……けれどただあなた様、徳川家のお栄えだけを旨としておいで遊ばすのでは、わしらが子の討死は、なんのためになったやら、なんの誉れといえようやら――迷わずにはいられませぬ」

こう云い出すと、老婆はもう泣いてもいない。老いさきのない命はそこにさし出しているというふうにすら見える。

「わしらを初め、村々の者は、代々ここの土に住み着いて百姓しておりまするが、いずれも遠い大祖は、伊勢の大神さまにしたごうて諸国にわかれた御先祖がたの裔でござりまする。いまとても天朝さまの百姓に相違ございませぬ。――源平のころ、建武の後、また応仁のみだれなど、長い幾世のあいだにかけて、ここらあたりも、御領主さまは遷り変ってまいりましたが、わしらにおさずけ下されている田や畑の土ばかりは変りませぬ。