轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
04 第四分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页
……はい、それやこれ、せがれどもの捨てた生命に、つい慾の涙を掻きこぼしたわけでござりまする」
家臣たちは、案じて、
「夜もおそくなりますゆえ、なお老婆へおたずねの儀もあれば、他日お城へ召されてのことになされては如何で」
と、家康の帰城をうながした。
なにか、夢からでもさめたように、家康もつぶやいた。
「おお、留守の者も、案じておろう……」
老婆へは、近日、あらためて沙汰しようと約束して、彼は黙々と、そこを去ったのであった。
前後の騎馬に守られながら、彼はまた暗い夜道を、浜松のほうへ駒を向けていた。
「田野のなかにも、無智な田夫ばかりはいない。真実をわきまえている怖ろしい民もいる。……世はみだれても、やはりかわらぬ皇国、そこの土に生きる民くさ、明国や朝鮮とはちがう」
彼の若い烈しい弓矢の精神も、きょうばかりは棒打ちされたここちで、あの一老婆に、まったく頭があがらなかった。――が、その自責は確かに、老婆とひとつな民くさの心が、彼にもある証拠だった。
「あッ、いかん……。後日を待っては」
途中、よほど来てから、家康は、急に、鞍のうえから振り向いて、なに思いだしたか、家臣のひとりへいいつけた。