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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

「いや、おもしろい。おもしろいものだ」

釜と談合の恰好である。ひとりで首を振っていた。そうしながら飽くまでも、うごくまいという算段を考えていた。

すると、どこかで、クツクツ笑うものがあった。時には、嬉々と、べつな忍び笑いも洩れる。

どっちの笑いかたも、明るくて無邪気だった。藤吉郎の耳が聞きのがすはずはなかった。――じっと顔を数奇屋の囲いのほうへ向けた。

「……ほら。ほらネ。あんなに似てるだろ」

「ほんに、お猿のような」

「どこのお人だろ」

「きっと、日吉のお使いさまでしょ」

ふたりの子どもの眼であった。

計らざりき――藤吉郎が釜の地紋に友愛を感じていると、その藤吉郎の顔をのぞいて、垣の外から興がっている幼い者たちがあった。

「……おッ?」

怒ったのではない。藤吉郎は歓喜に衝かれた。

長政とお市の方とのあいだにありと聞く四人の和子。――そのうちの万寿と茶々にちがいないと直感したからである。

にこ……と、藤吉郎はそこから笑みを送った。

すると。

垣のすきから覗いていた万寿と茶々は、

「あら。笑ってるよ」

と、ささやいて、もう一倍、ひくい声で、

「……お猿さんが笑った」