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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

「して――かんじんな御夫人と和子たちとのお別れは」

「それも、兼ねて……」

三河守の眼もとは、酔いながら、またふと涙にうるみかけた。

――さむらい集い。

どこの家中でも、平常によくある宴である。ふだんの階級や君臣の鉄則も、さむらい集いの座だけでは大まかにゆるされる。上下一体、暢々と、生命を楽しませて酔い歌う慣わしであった。

「なるほど」

藤吉郎は大きくうなずいて、

「こよい限りの君臣の死別と、こよい限りの御妻子との生別と、ふたつを併せての、さむらい集いでござったか。――そこまでに、長政どのの御心境もきまった上は、いかがでござろう。それがしも、亥の刻まで、ぽつねんと、鼠に引かれそうに居るのは退屈。――ご宴の末席に加わりたいが――いけませんかな?」

「されば、そのため、お探ししていたところでござる。殿にも、そういう御意にござれば」

「なに長政どのも」

「御夫人やお子たちを、織田家に託せば、あとあと何かにつけて、お世話にもならねば相ならぬと……。わけて幼い和子さまたちの行く末をお思いなされて」

「お案じあるな! ――と、そう直接申しあげたい。三河どの、ご案内たのむ」