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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
04 第四分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页
「ふん……ういことをいうやつ」
と、撫でてもやりたいように虎之助のすがたを見て、
「そうだ、この長浜の城下に、塚原小才治という兵学者がおると聞いておる。近日、塚原の道場をたずねて、勉強に通え。精出して、修行しておけ」
と、いった。
虎之助は、欣しそうだった。そこへ近侍が、朝の茶を運んですすめた。秀吉は浴後の渇をおぼえていたらしく、すぐ飲みかけたが、何か、思い出したように、
「薄茶をくれい」
と、云いだした。
彼の家中にはまだ茶道衆はいなかった。そういう閑人は無用であると思いこんで召し抱えずに来たものである。ところが小谷の城中で、あの戦時中、ふと、一茶室に坐って、自分とよく似た猿の地紋のある釜などを眺め入ったときから、急に、これはいいものだと、大仰に感心しだしたらしい。そう感じるとまた遮二無二、熱くなるのが、彼の性情でもあった。
「はッ……薄茶で。心得ました」
たれが点てるのやら、その道の者はいないので、侍臣のうち、少々は茶筅の持ち方ぐらい知っているのが、がちゃがちゃと掻きまわして来るにちがいない。
それでも、秀吉は、大満悦である。主君の信長などのすることは度々見ているので、茶わんを持って、茶わんに礼をすることだけは知っている。