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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

――間! ――揉む。解れる。久作、起きかえる。咄嗟。久作の手、鎧貫しを引き抜いて、新八郎の喉へ目がけて突く。鎧貫しの切っ先、外れる! そして、新八郎がうわ唇から鼻を削いで、眼孔へ突っこんだ。

「戦友の敵ッ」

後ろで、声がした。

首を掻く間もない。

刎ね跳んで、久作は直ちに、その敵と渡りあった。――この附近、すでに浅井方の決死隊が、何十人となく入りこんでいるらしく思えたが、敵は背後を見せて駈け出した。追いかけざま、刀で、膝を撲った。――倒れた上へ乗しかかって、久作が、

「名ある者か。何ぞ一言、ないか、あるか」

炎のような呼吸でいう。

「小林端周軒なり。ほかに、何らいうことはない。ただ、信長に近づかぬ間に、汝ごとき小侍の手にかかったが残念だ」

「浅井の家中なら知っていよう。浅井随一の豪の者、遠藤喜左衛門はどこにおる」

「知らぬ」

「いえ、吐かせ」

「知らぬ」

「ええ、面倒」

久作は、端周軒の首を挙げて、また血眼に駈け出した。

――今度の合戦には、浅井の遠藤喜左衛門の首は、他人の手には渡さぬ。

久作は、戦の前から、こう広言していたのである。是が非でも、喜左衛門の首を、討ってみせなければならなかった。