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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

――同時に、甲州へのお使い、また、浅井家や朝倉家などへも、機を逸さぬように、御密書を送られますように」

「よし。わかった」

「おぬかりもございますまいが」

密使の僧は、こっそり退って行った。――その日、べつの殿中には、信長が、着京の挨拶のため伺候して、義昭の出座を待っていた。

義昭は、何喰わぬ体をつくろって、信長の待っている公式の間へ現われた。

「姉川の一戦は、大そうな勝軍でお引揚げとやら、いつもながら御武勇なこと。いや、めでたい。祝着にぞんずる」

信長は、彼の世辞に、苦笑を禁じ得なかったが、皮肉にも、

「いや、御威徳によって、後事に憂いもなく、一途に戦えましたために」

と、いった。

義昭は、女のように、すこし顔赤らめながら、

「安心するがよい。洛中は見らるる通り至極平穏。――が、戦後、怖ろしく迅い上洛、なんぞまた、異変でも聞かれたかの」

「いえいえ。禁裡御普請の落成を拝し、その後、怠りがちの政務を視、かたがた御機嫌をお伺いに」

「いや、そうか」

義昭は、すこし安心して、

「このとおり身も健固、また、政務も滞りなく運んでおれば、そう心に懸けて、度々の上洛には及ばぬ。