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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

腹からの声である。

この間、山法師たちには、一語をさし挿む隙も与えなかった。

「――もしまた、命に従わねば、信長様にも、これまでとあって、根本中堂、山王七社、三千の坊舎、峰谷々をも焼きつくし、一山の輩、鏖殺しになさるべしとの御決意である。――我意なく、冷静に、お考えありたい。――当山をして、地獄と化すか、旧態の悪風を一掃して、霊地の一燈を保たるるか」

突然、法師側の間から、

「無用、無用ッ」

「詭弁だッ」

と、どなる者があった。

「しずまれ」

尊林坊は、それを制しながら、苦笑をふくんで、

「非常に陳腐で退屈な御説教であった。そこで、謹んでお答え申そう。叡山には叡山の権威があり、信条もある。要らざるおせッかいというほかない。一鉄どの、日が暮れる、はやはや下山されよ」

「尊林坊、おぬし一存でよろしいか。一山の碩学、長老をも会し、慎重に御僉議あっては如何だな」

「一山一心一体。尊林坊がことばは即ち全山の声でござる。さもなくて、何でこの山の嶮に信長調伏の旗を立てようや」

「では、どうあっても」

「愚や。愚や。われわれは飽くまで、武力の侵略者と抗争する。血をもって、伝統の自由を守る。