轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

02 第二分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页

青空文庫

「いいえ」

寧子は、顔を振ったが、ほの紅く面に血がうごいた。

「来たでしょう」

「お見えにはなりませぬ」

「……はてなあ」

赤蜻蛉を見送りながら、藤吉郎はちょっと考えこんでいた。

「御当家へも、姿を見せませんでしたか?」

かさねて訊ねながら、寧子の顔を見ると、寧子は、涙をためて、俯向いていた。

「――御勘気をうけて、犬千代は立ち退きましたぞ。お聞き及びか」

「……はい」

「お父上から聞かれたか」

「いいえ」

「では、誰に? ……。いや、お隠しなさることはない。わしと彼とは刎頸の友、何を聞かして下すっても、差しつかえはないのです。……来たのでしょう、ここへ」

「いえ。たった今、知ったばかりでございます。――お手紙で」

「手紙で?」

「はい」

「使いでもよこしてか」

「いいえ。今し方、わたくしの部屋の庭先へ、誰か礫を投げた者があるので、ふと下りてみると、結び文に小石をつつんだのが落ちていました。……見ると、犬千代様の」

云いかけて、声はおろおろ双つの袂につつまれてしまった。しのび泣きして、背を向けているのである。

聡明なる才女――とのみ思っていたが、やはり処女は処女であった。藤吉郎は、今まで見て来た彼女から、また一倍の美しさと、好める点を見出した。